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時事問題

新型コロナウイルスの影響で取引を止められてしまったら

1 新型コロナウイルスによる苦境

現在、新型コロナウイルスの影響で人の移動が制限されているだけでなく、海外からの輸入も滞りつつあり、飲食業や観光業だけでなく、資材不足等によって建設業界にも影響が出ています。

このように日本ひいては世界の経済状況が悪化の一途をたどっている状況で、長年にわたって契約を続けてきた取引先から、新型コロナウイルスの影響で経営状態が悪化し、もう取引を続けることができないと言われた、あるいは、逆に自社としてこれ以上取引を続けることができないと取引先に伝えなければならないという場面も多くなっているのではないでしょうか。

以下では、新型コロナウイルスの影響を理由にして、取引先から取引の継続を止められた場合にどうしたらよいか、補償を求めることができるのかという点やそれに関連する受領遅滞の問題についてお話しします。

2 解約権の制限

取引先から取引を解約したいと言われたとしても、取引が相当期間継続していて、受注者がその取引のために相当程度の資本を投下していることに鑑みて回収への期待が大きい場合や、その取引への依存度が高く受注者の不利益が大きい場合には、契約の解約にやむを得ない事由または一定期間の解約の予告期間が必要とされることがあります(東京地判平成22年7月30日、福岡地裁小倉支判昭和56年12月24日など)。

 

もっとも、仮に正当な理由がないとして取引継続が認められたとしても、発注者がどの程度の量を発注するかは自由というのが原則ですから、受注者の利益にはあまりならないものと考えられます。

他方で、裁判例として数カ月分の報酬相当額の損害賠償請求が認容されているケースもありますので、取引を止める代わりに一定程度の損害を賠償してもらう形で和解するというのも一つの方法ではないかと思います。

 

3 受領を拒否されたら

また、逆に、こちらが契約どおり物資を提供しようとしたにもかかわらず、イベントの中止や工事のストップにより、相手からその物資の受領を拒否されるケースもあり得ます。

これは一般に「受領遅滞」や「受領拒絶」と言われる問題ですが、2020年4月1日から施行されている改正民法413条(原則として2020年4月1日以降に締結された契約に適用され、それ以前の契約には改正前の民法が適用されます。)は「債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができないときは、その債権者は履行の提供があった時から遅滞の責任を負う」と定めています。そのため、こちらが履行の提供をしたにもかかわらず、相手がその物資の受領を拒んだ場合には、相手の代金支払債務が遅滞となり、こちらから相手に代金を請求し、また、代金支払債務を遅滞した責任も追及することができます。

 

また、当該取引が下請法の適用対象となる場合、受領拒絶が下請法4条1項1号の「下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の受領を拒むこと」に該当する可能性があります。この「下請事業者の責に帰すべき理由」は非常に限定的な場合のみであって、新型コロナウイルスの影響はこれに該当しないと考えられます。

そのため、①下請法違反となることを指摘して成果物の受領を求めることや、②公正取引委員会による調査や勧告を求めることも考えられます。

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