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時事問題

新型コロナウイルスの影響で休業手当を支払った場合の助成金(雇用調整助成金)について

本稿では、実際に事業主及び従業員が新型コロナウイルスに感染したかどうかにかかわらず、事業主が休業(事業活動を縮小)し、やむなく休業手当を支払って、労働者に休暇を与えた場合に申請できる雇用調整助成金について説明させていただきます。

 

1 そもそも雇用調整助成金とは

雇用調整助成金は、経済上の理由により、事業活動の縮小が余儀なくされ、雇用調整を行わざるを得ない事業主が、労働者に対し、一時的に休業、教育訓練又は出向(以下、「休業等」といいます。)を行い、労働者の雇用を維持した場合に、休業手当、賃金等の一部を助成するものです。

雇用調整助成金の前身である雇用調整給付金が制定されたのは1974年と古く、この新型コロナウイルスの影響拡大に対して新たに設置されたものではありません。事業の縮小とともに従業員に対して休業手当を支払った事業主に対する支援という大きな枠組みは従来から変更はなく、2008年のリーマン・ショックや2011年の東日本大震災の際にも多くの事業者に活用されました。

 

2 新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた特例措置

雇用調整助成金を申請するには、様々な要件を満たす必要があり、対象となる労働者にも制限があります。また、事前に休業等実施計画届を公共職業安定所に提出する必要があります。しかし、新型コロナウイルス感染症が経済活動に与える影響が甚大であることを踏まえて、現在は上記の要件や対象の範囲が下表の通り緩和されています。

項目 通常時 新型コロナウイルス感染症特例措置

(右緊急対応期間以外)

新型コロナウイルス感染症特例措置

(緊急対応期間:2020年4月1日~2020年6月30日)

対象となる事業主 経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主(雇用保険適用事業所かつ事業開始後1年超) 新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主(雇用保険適用事業所かつ2020年1月24日までに事業開始) 同左
労働者の範囲 6か月以上の雇用保険被保険者 雇用保険被保険者

 

全ての労働者
売上等(生産指標)の減少要件 直前3か月と前年の同期間の実績を比較して売上が10%以上下落 直前月と前年同期の実績を比較して売上が10%以上下落

※ 2020年1月24日時点で事業開始後1年未満の事業主は直前月と2019年12月実績とを比較

直前月と前年同期の実績を比較して売上が5%以上下落

※ 同左

休業等実施計画届の提出時期 休業等を実施する前(初回は2週間前、2回目以降は休業等の前日まで) 休業等を実施した後でも可(2020年5月31日まで) 休業等を実施した後でも可(2020年6月30日まで)
助成率 休業手当等の2/3(大企業は1/2)

上限は8,330円

教育訓練を実施した時は1,200円/人日を加算

年間100日(3年間150日)

同左 休業手当等の4/5(大企業は2/3)、なお解雇等を行わない場合は9/10(大企業は3/4)

上限は8,330円/人日

教育訓練を実施した時は1,200円/人日を加算

年間100日(3年間150日)+緊急対応期間

 

3 積極的な活用の勧め

雇用調整助成金は、休業等実施計画届や事業活動の状況に関する申出書、労使協定書、労働者名簿や就業規則、賃金規程、年間営業カレンダー、月次損益計算書等の書類の提出が求められますが、比較的容易に申請できる助成金です。事業主は、完全に休業したうえで労働者の全員を一度に休ませる必要はなく、規模を縮小して事業を継続し、労働者の一部分を休ませた場合にも、その休ませた労働者が算定対象になります。そのため、当該助成金を申請するには、労働者と協議したうえで個々の労働者ごとに出社日を決定する必要があります。なお、1日の営業時間を短縮する目的で、出社した労働者全員が一斉に1時間以上の休業を行う場合にも対象となります。

資金繰りが悪化している状況において、人件費削減のために、解雇予告手当を支払い、労働者を解雇することも選択肢の一つではあります。しかし、今後業績が回復した時点で発生する種々の経済的・時間的コスト(人材募集、教育等)を考えると、当該助成金を受けつつ、現在の雇用を維持することも有効な選択肢ではないでしょうか。

 

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