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時事問題

新型コロナウイルスによる業績悪化で整理解雇ができるか

今年の1月から続く新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大に伴い、世界経済は大打撃を受けています。感染拡大がいつまで続くかわからない中で、企業としては、やむなく人員整理を行わなければならない状況に直面するかもしれません。このことは、スポーツチームでも同じ状況だと思います。

 

では、このような感染症の爆発的な流行による業績悪化を理由に、会社が整理解雇をすることができるのでしょうか。

 

1 整理解雇の適法性を判断する要素

整理解雇というのは、会社の経営上必要とされる人員削減のために行う解雇のことです。業績が悪化し、会社や事業の存続のためには人員を削減するほかないという場合に行われるものです。

このような整理解雇については、会社を維持するために必要なこととはいえ、経営上の理由で労働者の生活の糧を奪ってしまいますので、有効性については裁判例上慎重に判断されています。裁判例の多くは、以下のような4つの要素を総合的に考慮して有効性を判断しています。

①人員削減の必要性

②解雇回避努力を尽くしたかどうか

③人選の合理性

④手続の妥当性

 

2 ①人員削減の必要性について

債務超過に陥っているかどうか、赤字累積があるかどうかなどの経営状況を中心に判断されますが、近年は、企業の経営実態に細かく立ち入るのではなく、基本的には使用者の経営判断を尊重する傾向にあると思います。

今回のコロナ禍で急速に業績が悪化し、これまでの状態を維持できなくなった企業は多いと思います。飲食店の中には、売上が9割減となった店もあるようです。そのため、人員削減の必要性については比較的認められやすいのではないでしょうか。

 

3 ②解雇回避努力について

人員削減をする必要がある場合でも、解雇を行う前に、解雇以外の方法で解雇をできる限り回避することが求められています。例えば、残業を規制したり、新規採用を控えたり、非正規従業員の雇い止め、希望退職者の募集などが考えられます。

これらの手段をとった上での整理解雇であれば、解雇回避努力義務は認められやすいと思います。今回のように、予期せぬ災害や疫病等で急速に業績が悪化し、上記のような手段をとっている余裕がないような場合もあります。そのような場合は、必要性の高さとの兼ね合いで解雇回避努力を果たしたかどうかが判断されるでしょう。

 

4 ③人選の合理性について

整理解雇でありがちなのが、気に入らない従業員を整理解雇の名の下に追い出すという手法です。感覚的にわかると思いますが、このような人選はもちろん合理性に欠けます。

なるべく経営陣の恣意を挟む余地をなくすためにも、客観的で合理的な選定基準を定め(業務成績や勤続年数、扶養家族の有無などはその指標となりやすいでしょう)、その基準を公平・公正に適用して解雇者を選定することが求められます。

 

5 ④手続の妥当性について

手続については、現在の会社の状況を含む人員整理の必要性や解雇回避の方法、整理解雇の時期・規模・人選方法などについて従業員に対して説明をし、納得を得るために協議すべきです。

ここでは、労働組合と協議してその理解を得ているだけでは足りず、解雇される可能性の高い従業員から意見を聞くなどをしていなかったとして、手続きが十分でないとされた例もありますので、会社が定めた基準に該当して、整理解雇の対象となりそうな従業員からはきちんと意見を聞いた上で、判断することが必要となってくるでしょう。

 

6 まとめ

このコロナ禍の影響でBリーグは残りの全試合を中止にし、Jリーグやプロ野球も開幕時期について見通しが立っていない状況です(令和2年4月5日現在)。試合がないことでスポーツチームは収入的に大打撃を受けていると思います。ただ、このような状況にあるからといって、安易に人員整理を図るのではなく、他の方法によって回避できないか、回避できないと判断した場合にも、上記のような手続をとった上で慎重に対処する必要があるということを理解しておいてもらいたいと思います。

以上

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