March 16, 2020
スポーツベッティングについての現状と今後の課題
FIFAワールドカップの大会中には、TV番組などでも、試合の勝敗に関する英国のブックメーカーのオッズが報じられることがありますが、実際にブックメーカーを通して賭けを行ったことがある人は少数派ではないでしょうか。
これまで、日本や米国はスポーツベッティングを違法行為としてきました。しかし、近年、米国では合法化(一部の州)が進んでおり、風向きが変わってきています。また、我が国も包括的な検討の要否について議論がなされており(H29.3スポーツ庁 スポーツ未来開拓会議(第7回))、今後スポーツベッティングは我々の生活に深く浸透していく可能性があります。
そこで、本稿ではスポーツベッティングの現状、スポーツベッティングへの期待、そしてスポーツベッティングの課題について、お伝えしたいと思います。
1 スポーツベッティングの現状
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日本の現状
日本において、スポーツベッティングは、刑法185条などにより違法行為とされています。しかし、競馬・競輪・競艇・オートレースは、それぞれ規制する特別法に基づき、公営競技として許可されています。また、男子サッカーを対象としたスポーツ振興くじ『toto』、『BIG』なども特別法により合法化されています。
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諸外国の現状
一方、スポーツベッティングが盛んな諸外国では、スポーツベッティングが生活の一部として根付いており、ブックメーカーがサッカー、バスケットボール、テニスなどのあらゆるスポーツを対象としたサービスを提供しています。ベッティングの対象には、日本のJリーグ、プロ野球や相撲を対象としたベッティングも行われています。
2 スポーツベッティングへの期待
違法行為であるスポーツベッティングの合法化が期待される理由としては、次の理由が考えられます。
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税収の増加・雇用の創出
これまで違法に行われている賭け金が合法的に市場に流通することにより税収が増加することが期待されます。また、オープンでクリーンな資金を基礎として、雇用を創出することが期待されます。
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スポーツの振興
ベッティングをきっかけに、スポーツへの興味につながり、新規ファンを獲得する効果が期待されます。また、ベッティングデータを分析し、スポーツコンテンツの価値向上を図ることも期待されます。
3 スポーツベッティングの課題
スポーツベッティングの合法化を目指すためには、廉潔性(誠実性・健全性)の確保・維持・向上が必要となります。ベッティングによる巨額の資金の獲得を意図して、八百長が発生することを想像することは、過去の事例からも、想像に難くありません。そのため、スポーツベッティングの合法化を目指すためには、インテグリティの確保・維持・向上が必要不可欠です。
各スポーツにおいて、インテグリティを確保・維持・向上するための施策として、次の対策がとられています。
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内部的な仕組み作り
各スポーツ団体では、八百長に関する研修をアスリートに対して行い、八百長の防止に努めています。さらに、公営競技(競馬・競輪・競艇・オートレース)では、期間中は所定の施設に宿泊し、外出や緊急時以外の外部との連絡を接触を禁じて、八百長防止に取り組んでいます。
また、毎年、数名の無名選手が八百長で摘発されている国際テニス連盟(ITC)では、より抜本的な仕組みとして、収入が少ない、食べられないアスリートが、金銭欲しさに八百長に手を出すことがないよう、下位選手の適切な人員数について検討すると言及しています。
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外部的な仕組み作り
国際オリンピック委員会(IOC)や国際サッカー連盟(FIFA)では、国際刑事警察機構(ICPO)やEarly Warning System社(EWS社)と協力し、競技・試合における異常な掛け率変動の有無を検知・分析し、八百長防止に取り組んでいます。
しかし、依然として、八百長は行われており、いたちごっごが続いており、今後の大きな課題となっています。