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時事問題

チケットの払戻請求権の放棄を寄附金控除の対象とする税制改正 ~チームやアスリートを経済的に応援するために~

1 はじめに

「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律」(令和2年法律第25号)等が成立し、中止等されたスポーツイベント等について、チケットの払戻しを受けない(放棄する)ことを選択された方は、その金額分を「寄附」と見なし、税優遇(寄附金控除)を受けられる新たな制度が創設されました。これは、政府の自粛要請を受けて、苦渋の決断で開催を中止等したスポーツイベント等の開催者やアスリートを支援する意思で、あえて既に払い込んだチケット代の払戻しを受けない、あるいは既に払戻しを受けたものの、払戻金をそのまま寄付するという選択をしたファンへの税務上の優遇措置です。

 

2 内容

(1)対象イベント

以下の全ての要件を満たすイベント

① 文化芸術又はスポーツに関するもの

② 令和2年2月1日から令和3年1月31日までに開催された又は開催する予定であったもの

③ 不特定かつ多数の者を対象とするもの

④ 日本国内で開催された又は開催する予定であったもの

⑤ 新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響により、現に中止・延期・規模縮小されたもの

⑥ 中止等の場合には、入場料金・参加料金等の対価の払戻しを行う規約等があるもの又は現に払戻しを行っているもの

※主催者からの申請に基づき、文化庁・スポーツ庁が対象イベントを指定する。指定されたイベントはHPに掲載される。なお、5月15日~6月5日までで指定を受けたイベントの一覧は下記リンク先をご参照ください。(https://www.mext.go.jp/sports/content/20200522-spt_sseisaku01-000007333_2.xlsx

※具体的には以下のようなイベントが想定されている。

・音楽コンサート、エンターテインメント、伝統芸能などの公演イベント

・映画、博物館等、個展、テーマパークなどの観覧イベント

・プロスポーツの試合、マラソン大会などの参加型スポーツイベント

※既に中止等が決定されたイベントで、払戻を行わないことを決定・公表している場合は、本要件を満たさない。

 

(2)申告方法

参加者(ファン)自身が対象イベントの主催者に払戻しを受けないことを連絡し、主催者から、「指定行事証明書」と「払戻請求権放棄証明書」を入手する。その後、翌年の確定申告で税額控除の手続を行い、主催者から交付を受けた上記2種類の証明書を、確定申告書や他の必要書類と共に税務署に提出する(e-taxでの電子申告でも可)。

※既に払い戻してしまっていたとしても、一定の期間内に、主催者に対して、その払戻し分を寄附することを連絡し、実際に寄附を行えば、対象となる。

※所得から一定の控除額を差し引く「所得控除方式」を選択することも可能であるが、通常は税額から直接に一定の控除額を差し引く「税額控除方式」のほうが有利となる。

 

(3)減税額

「税額控除方式」の場合、(対象チケット代金合計-2,000円)×40%

※住んでいる自治体が指定したイベントについては、さらに最大10%分が住民税から減税されるため、減税割合は最大50%となる。

※年間ごとに合計20万円までのチケット代金分が、この制度による優遇の対象となる。

 

3 まとめ

上記の寄付金控除を受けても、払い込んだチケット代金と同額の減税が受けられるわけではなく、単純に払戻しを受けたほうが、手許資金は残ります。スポーツイベントやアスリートを経済的に支援したいという気持ちを有する方向けの制度ですので、十分なご検討の上でご利用ください。

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