April 2, 2020
新型コロナウイルスの影響で休業した場合の給料はどうなる? ~事業の休止に伴う休業の場合~
本稿では、従業員に感染者が出た場合や取引先に感染者が出た場合に、会社の事業休止などを余儀なくされ、やむを得ず休業する場合等の休業手当等についてお話していきます。
1 従業員に感染者が出て事業休止を余儀なくされた場合
報道でも目にされているとおり、従業員に感染者が出た場合、他の従業員も感染しているおそれがあることなどから、保健所の調査などが入り、一定期間休業を余儀なくされます。
この場合、感染した従業員の感染の原因が会社の故意または過失にあるという場合でない限り、民法536条2項による給料全額の支払義務はありません(また、そういった場合はかなり稀でしょうから多くのケースでは全額の支払義務はありません)。
他方、労基法26条では、不可抗力でない限り、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の60%以上)を支払わなければならないとされているため、不可抗力に該当するかが問題となります。
ここでいう不可抗力とは、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの2つの要件を満たすものでなければならないと解されています。
新型コロナウイルスの場合、感染経路が不明であることも多く、使用者の事業によって感染が起きたか否かはわからないことが多いと思います。それゆえ、①を充足する可能性は高いです。
しかし、事業を休止するか否かについては、使用者の経営判断によるものである場合もあり、②の要件を満たすか微妙なケースも多いと思います。
したがって、休業手当を支払わなければならない可能性も高いと考えておくべきでしょう。
2 取引先に感染者が出て事業休止を余儀なくされた場合
この場合も、会社の故意または過失がない限り、民法536条2項による給料全額の支払義務はなく、通常の場合は故意又は過失が認められることは少ないでしょう。
次に、休業手当についてですが、これも1と同じように不可抗力によるものといえるかにかかってきます。
取引先が新型コロナウイルスを受け事業を休止したことに伴う休止の場合には、会社自体には感染者はおらず、1のように保健所の調査等は入っていませんから、1の場合以上に休止については多分に経営判断が入り込んでいることと思います。そのため、不可抗力に該当する例はそう多くはないと思いますが、当該取引先への依存の程度、他の代替手段の可能性、事業休止からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、不可抗力といえるかを判断する必要があると考えられます。
以上のように、事業休止に伴う休業の場合には、事業休止するか否かについて会社の経営判断が入り込んでくるため、感染した従業員本人が就業禁止により休業した場合などに比べて、不可抗力といえる場合は少ないと考えられます。
もっとも、事業を休止しているということは、会社自体も利益を上げることができず、給料の支払いが困難な場合も多いでしょう。そのため、助成金を積極的に活用するなどして労働者の不利益回避と会社そのものの存続の手立てを講じていく必要があります。
たとえば、雇用調整助成金については【新型コロナウイルスの影響で休業手当を支払った場合の助成金(雇用調整助成金)について】という記事をご覧ください。