May 8, 2020
新型コロナウイルスによる小学校等の休校により休業せざるを得なかった場合の助成金~小学校等休業対応助成金(労働者雇用向け)~
新型コロナウイルスにより、政府が令和2年3月2日以降の休校を全国各地の小学校等に要請し、多くの地域において春休みが終了した現在においても休校が継続しています。
その結果、休校により小学校に行けなくなったお子様の世話をするために休暇を取らざるを得ない従業員が在籍している会社もあるのではないでしょうか。
そのような従業員に対して有給休暇(労基法上の年次有給休暇を除く)を取得させた場合に、会社が受け取る助成金として、「小学校等休業対応助成金」というものがありますので、本稿ではその支給要件などをご紹介します。
1 要件
「小学校等休業対応助成金」を受けるための要件は、
①a 新型コロナウイルスに関する対応として、ガイドラインなどに基づき、臨時休業などをした小学校などに通う子ども
又は
b 新型コロナウイルスに感染した子どもなど、小学校などを休む必要がある子ども
がいるため、
② 保護者として子どもの世話を行うことが必要となった労働者に対し、
③ 会社が有給の休暇を取得させたこと
です。
2 ①aの要件について
「臨時休業など」とは、
新型コロナウイルスに関する対応として、小学校などが臨時休業した場合、自治体や放課後児童クラブ・保育所などから利用を控えるよう依頼があった場合をいいます。学校長が新型コロナウイルスに関連して出席しなくてもよいと認めた場合も対象になります。
ただし、保護者の自主的な判断で休ませた場合は対象外です。
「小学校など」とは、
・小学校、義務教育学校の前期課程、各種学校(幼稚園または小学校の課程に類する課程を置くものに限る)、特別支援学校(すべての部)、
・放課後児童クラブ、放課後等デイサービス、
・幼稚園、保育所、認定こども園、認可外保育施設、家庭的保育事業等、子どもの一時的な預りなどを行う事業、障がい児の通所支援を行う施設
などをいいます。
3 ①bの要件について
(ア)新型コロナウイルスに感染した子ども
(イ)新型コロナウイルスに感染したおそれのある子ども(発熱などの風邪症状、濃厚接触者)
(ウ)医療的ケアが日常的に必要な子ども、または新型コロナウイルスに感染した場合に重症化するリスクの高い基礎疾患などを有する子ども
をいいます。
なお、「小学校等を休む必要がある」とは、学校の場合、学校長が出席を停止し、または出席しなくてもよいと認めた場合をいいます。
4 ②の要件について
対象となる保護者は、
親権者、未成年後見人、その他の者(里親、祖父母など)であって、子どもを現に監護する者
です。
なお、各事業主が有給休暇取得の対象とする場合は、子どもの世話を一時的に補助する親族も含みます。
5 ③の要件について
労基法上の年次有給休暇とは別に、有給の休暇を取得させることが必要です。
対象となる有給の休暇の範囲については、
半日単位の休暇、時間単位の休暇もその分の賃金を支払う限りは対象となります(もっとも、勤務時間短縮は、所定労働時間自体の短縮措置であり、休暇とは異なるため対象外です)。
また、休暇制度について、就業規則などに規定がない場合でも、上記要件に該当する休暇を与えた場合は対象になります。
さらに、当該日を年次有給休暇取得日、欠勤日、勤務時間短縮日などとしていたものの、事後的に特別休暇に振り替えた場合でも対象になります(ただし、事後的に特別休暇に振り替えることについて労働者本人に説明し、同意を得る必要があります。)。そのため、当該助成金の存在につき、事後的に知ったとしても、申請することができるものとなっています。
また、飲食業やサービス業等においては、営業日やシフトの関係などで、土日や祝日が勤務日であることも多いと思いますが、もともと勤務日である土日・祝日に取得した休暇の取り扱いは以下のようになっています。
(1)要件①aに該当する子どもの場合
学校であれば、学校の元々の休日以外の日であれば対象となり(日曜日や春休みなど元々休みの日は対象外です)、その他の施設(放課後児童クラブなど)は、本来施設が利用可能な日であれば対象になります。
すなわち、労働者が休暇を取得した日が土日・祝日か否かが問題なのではなく、学校等の子どもが通っている施設が本来休みではない日に臨時休業したか否かが問題となります。
(2)要件①bに該当する子どもの場合
この場合は、対象労働者の子ども自身に学校等を休む必要性があり、対象労働者はその世話をするために休業する必要があるため、施設の元々の休日か否かにかかわらず、令和2年2月27日から同年6月30日までの間は、すべての日が対象になります。
6 助成金額
有給休暇を取得した対象労働者に支払った賃金相当額の全額が支給されます。
具体的には、対象労働者1人につき、対象労働者の日額換算賃金額(8,330円が上限です)×有給休暇の日数で算出した合計額となります。
労働者に対しては、年次有給休暇を取得した場合に支払う賃金の額(つまり全額)を支払っている必要があります。
助成金の支給上限は日額8,330円であり、賃金のうち、8,330円を超える部分は会社の負担となります。
その場合、半日単位の休暇、時間単位の休暇も対象となることを活かして、半日だけ出勤してもらい、残り半日を有給休暇にする等により、そもそもの一日当たりの支払賃金を減少させることで、会社の負担を減らすことができます。
「雇用調整助成金」の場合には、休業手当(平均賃金の6割以上)を支払えば対象となりましたが、「小学校休業等対応助成金」は、有給休暇取得時の賃金の全額を支払う必要があります。
他方、「雇用調整助成金」は最大でも休業手当の9割しか助成されませんが、「小学校休業等対応助成金」は全額が助成されます。
ただし、いずれも日額8,330円の上限がありますので、どちらが会社の負担が少ないか試算する必要があります。
なお、いずれも労働者がパートやアルバイトでも対象となります。
7 申請のための必要書類及び申請期間
申請のために必要な書類は、
・申請書一式(支給申請書、有給休暇取得確認書、支給要件確認申立書)
・休暇を取得したことがわかる資料(出勤簿、タイムカード、休暇簿など)
・賃金が支払われていることがわかる資料(給与明細、賃金台帳など)
・助成金の振込先口座がわかる書類(銀行の通帳を開いた最初のページのコピーなど)
・小学校などが休業したことがわかる書類(学校からの便りなど)
です。
申請書一式については、厚生労働省のHPからダウンロードすることができます。同じページに記載例も載っており、さらに動画で記載の仕方などを解説していますので、詳細はそちらをご覧ください。
また、申請期間は、令和2年9月30日までです。(なお、「雇用調整助成金」は令和2年6月30日までです。)
申請先は、学校等休業助成金・支援金受付センターです(厚生労働省ではありません)。
郵送でも申請可能ですが、申請書の控えは返ってきませんので、提出書類はすべてコピーを取った上で、簡易書留やレターパックプラス(赤色のもの)などで郵送することをお勧めします。
8 おわりに
この助成金は、事後的に申請しても(これまでにすでに年次有給休暇取得日や欠勤日として扱ってしまっている場合でも)、対象となる有休の休暇に振り替えて受給することができるなど非常に使い勝手が良く、さらに、申請書のフォーマットが厚生労働省ホームページにあり、動画でも解説されているなど、申請手続きも比較的簡単です。
したがって、雇用している労働者が子どもの世話をするために休まざるを得なかったという場合は、是非この助成金を活用していただければと思います。